大西家十代「大西浄雪」極めの「古天明 面取肩衝釜」です。
母は生前お茶が趣味で、出品の茶釜は、極箱に入っていたメモの日付から45年前に譲り受けたもので、メモの他に修理に出した時の納品書も。納品書には釜底しめ直し・傷み直しの修理内容と合計金額が。メモや納品書の日付から修理に約半年を要し、修理費用も高額。何世代にも渡り大切に使われる茶道具だからこそでは。
大西浄雪(1777年〜1852年)は、江戸後期の京都三条釜座(かまんざ)の釜師。
極め書の「乙巳(きのとみ)」は2025年の干支でもあり、60年周期から逆算すると180年前の1845年、浄雪68歳の時の極めで、茶釜はさらに古い時代のものでしょう。
ちなみに1845年は、老中水野忠邦が主導した天保の改革、倹約令が出され質素倹約が徹底されていた時期です。
極箱側面に「古天明、面取肩衝釜、共蓋」の貼り紙が。釜は肩の角に丸味を持たせ、上に向かって少しづつ太く、蓋は本体と同じ素材で作製、と言った内容。
なお、素朴で凛々しい形状の肩衝釜は実用性と芸術性を兼ね備えるとされてきたようです。
極め書は家系毎ほぼ一定の書式で、出品のものは大西家の書式に従った次の内容です。
①面取肩衝釜/
②一 胴径六寸五分/
③一 採口三寸八分/
④一 鐶附 鬼面/
⑤右ノ釜古天明之平爲無紛論者也/
⑥乙巳 季春日(きはるひ)/
⑦御釜師 大西浄雪 印/
⑤の「之平爲」は間違?「爲」は「作」の異字体?
「無紛論者也」は「紛(まぎ)れもない論(ろん)ずる要(よう)もないものなり」でしょうか。
大きさ(㌢)重さはおよそ次の通りで、測定値は極め書と違いません。
口径11.5、肩径19.4+鬼面3.6、
胴径19.7、底径11.2/
高さ18.0+蓋摘3.5/重さ3.2㌕/
共箱22.6角、27高/重さ1.6㌕/
出品の茶釜は時代、世代を経た格別な味わいがあり、極箱も十分骨董感が。
茶釜は45年前に修理され、錆落しされ、釜底の素材も異なるようですが?元々は肩衝翼釜?極め時には無翼?元の形態や状態はなど知る由もありませんが。
修理がなされ、茶釜や蓋に目立つ損傷、凹み、変形などはほとんど見られず、水を満たし一昼夜放置しましたが、漏れはありませんでした。
今後も世代を経てお使いいただき、また、極め書不明の「之平爲」を解明していただけると嬉しく思います。
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